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気仙沼簡易裁判所 平成4年(ハ)11号 判決

原告

株式会社オリエントコーポレーション

右代表者代表取締役

阿部喜夫

右代理人支配人

吉田敏郎

被告

甲野一郎

主文

一  被告は、原告に対し、金一二万四八〇〇円及びこれに対する平成二年六月二八日から支払済みに至るまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決の主文第一項は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の申立

一  請求の趣旨

1  主文第一、二項と同旨

2  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、割賦購入あっせんを目的とする会社である。

2  原告は、被告との間で、昭和六三年六月五日、次のとおりの立替払契約を締結した。

(1) 原告は、被告が訴外株式会社ユニ・ウィーン(以下、単に「ユニ・ウィーン」という。)から購入した寝具の代金一九万八〇〇〇円を、ユニ・ウィーンに支払う。

(2) 被告は、原告に対し、原告がユニ・ウィーンに対し支払った右立替金及び手数料三万三六六〇円の合計金二三万一六六〇円を別紙支払予定表に記載のとおりに分割して支払う。

3  原告は、右立替払契約に基づき、ユニ・ウィーンに対し、昭和六三年六月二〇日、被告がユニ・ウィーンから購入した寝具代金一九万八〇〇〇円を支払った。

4  被告は、原告に対し、別紙入金明細表に記載のとおりに合計金一〇万六八六〇円を支払ったが、その余の支払をしない。

よって、原告は、被告に対し、立替金及び手数料残金合計金一二万四八〇〇円及びこれに対する割賦支払最終期限の後の日である平成二年六月二八日から支払済みに至るまで商法所定の年六パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する答弁

1  請求原因事実は全部否認する。

2  被告は、訴外株式会社光陽商事(以下、単に「光陽商事」という。)から寝具を購入し、その代金支払のための立替払契約を原告との間で締結したことはあるが、ユニ・ウィーンから寝具を購入したことはなく、ユニ・ウィーンへの代金支払のために原告との間で立替払契約を締結したこともない。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

一(当事者間に実質的な争いのない事実)

①原告は、割賦購入あっせんを目的とする会社であること、②原告と被告は、昭和六三年六月五日、被告が販売店から購入した寝具の代金一九万八〇〇〇円を原告が販売店に対して支払う旨の立替払契約を締結したこと、③この立替払契約による手数料額は三万三六六〇円であり、立替払金及び手数料の合計金二三万一六六〇円の割賦弁済額等は別紙支払予定表に記載のとおりであること、④原告は、右立替払契約の約定に基づき、ユニ・ウィーンに対し、昭和六三年六月二〇日、寝具代金一九万八〇〇〇円を金融機関の預金口座からの自動引落の方法により支払ったこと、⑤被告は、原告に対し、別紙入金明細表に記載のとおりに合計金一〇万六八六〇円を支払ったが、その余の支払をしないこと、以上の各事実は、いずれも実質的には被告も争ってはおらず、かつ、ショッピング・クレジット契約書(〈書証番号略〉)及び被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨により認められる。要するに、本件立替払契約上の販売店の同一性に関する事実を除くそれ以外の事実関係については、当事者間に実質的な争いがない。

二(争点に対する判断)

被告は、光陽商事から寝具を購入し、その代金支払のための立替払契約を原告との間で締結したことはあるが、ユニ・ウィーンから寝具を購入したことはなく、ユニ・ウィーンへの代金支払のために原告との間で立替払契約を締結したこともないと主張する。

たしかに、ショッピング・クレジット契約書(〈書証番号略〉)の販売店欄にユニ・ウィーンのゴム印が押捺されている以外、被告がユニ・ウィーンから寝具を購入した事実を直接に立証する証拠はない。しかしながら、本件記録上の各証拠により認められる次の各事情を前提にすると、被告は、原告に対し、本件立替払契約の販売店が異なることを理由として、立替払金及び手数料の残金の支払を拒み、あるいは、訴訟において右のような主張をすることは、信義則に反するものとして許されないものと判断する。なお、被告と光陽商事との間の寝具購入契約が公序良俗に反するものとして無効であるか又は詐欺により取消されるべきものであるとしても、同様の理由により、被告は、原告に対し、その無効又は取消を主張することも許されないものと判断する。

①  被告は、光陽商事から寝具を購入し、それと同時に、寝具の代金の立替払契約の締結に関する事務一切を光陽商事に委託し、光陽商事のとった諸手続の結果、販売店をユニ・ウィーンとするショッピング・クレジット契約書(〈書証番号略〉)が作成された。

②  ユニ・ウィーンは、無限連鎖販売類似の寝具売買を目的とする会社である。たとえば、買主を寝具の販売店として登録し、登録された販売店が代金一九万八〇〇〇円の寝具を他の買主に販売すると、活動手当二万円のほか、販売奨励金が二五箇月にわたり一箇月金二万四〇〇〇円ずつ(合計金六〇万円)支給されるが、この活動手当及び奨励金の合計額である六二万円は、寝具代金の四倍以上に相当し、単なる寝具の販売を業とする会社としては最初から破綻することが明らかであり、むしろ、販売店を連鎖的に確保し、初期販売利益を短期間に獲得することを狙ったかなり異常かつ悪質な商売を目的とする会社であろうと推定される。

そして、光陽商事は、ユニ・ウィーンのダミー会社又は代理店あるいは連鎖販売の一経過点たる地位を有するものである。したがって、ユニウィーンと光陽商事とは、実質的に見て同一の会社であると推定される。なお、ユニ・ウィーンの代表者は、ユニ・ウィーンと光陽商事とが無関係である旨を寝具購入者に説明し、原告との間でクレジット契約を締結しないように通知等を発してきたようであるが、ユニ・ウィーンのこのような行動は、むしろ、自己の法的責任を免れるための方便に過ぎないと推定するのが事実の経過に合致している。

③  被告も、右連鎖販売に積極的に参加し、被告の妻に対して寝具を販売し、あるいは、多数の買主(氏名等不詳)に対し寝具の販売を継続的に行い、その報奨金として、光陽商事を通じ、巨額の利益を得てきたほか、光陽商事以外からも類似の報奨金を受けている疑いがある。

④  ところが、被告は、本件被告本人尋問の場において、自らを連鎖販売の被害者であり、その取引額もわずかであると述べるだけでなく、光陽商事による被害救済のための被害者の会なる団体に対しても、虚偽の事実を申告している。

⑤  原告は、ユニ・ウィーンからの委託によって本件立替払契約を締結し、かつ、被告から法定の期間内に特にクレームやクーリング・オフの申出等もなかったので、本件立替払を実行したものであり、かつ、原告とユニ・ウィーン又は光陽商事との間には、特別の利害関係はない。

三(結論)

以上によれば、原告の被告に対する本件請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を、仮執行宣言につき民事訴訟法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官夏井高人)

別紙支払予定表〈省略〉

別紙入金明細表〈省略〉

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